ランニングを終えてシャワーを浴びた瞬間、脇のあたりがピリッと沁みて「うわっ」と声が出る——。腕を振るたびに脇や体の側面がこすれ、赤くヒリヒリして痛い。ひどいと皮がむけて下着に血がにじむこともあります。走ること自体は楽しいのに、この脇擦れが気になって距離を伸ばせない、腕振りを小さくしてしまう、という市民ランナーは驚くほど多いです。
結論から言うと、脇擦れは「摩擦・汗・生地」の3つが重なって起きる肌トラブルで、走る前のひと塗りとウェア選びでほぼ防げます。すでに痛い場合も、正しい応急処置をすれば数日で治り、再発もコントロールできます。根性で我慢するものでも、走るのをやめる理由でもありません。
・脇が擦れて痛くなる3つの原因と、意外と知られていない本当の主犯
・走った後にヒリヒリしたときの正しい応急処置とNGケア
・ヴァセリン・Body Glide・プロテクトJ1を価格と持続時間で徹底比較
・レベル別・季節別に「自分に合う脇擦れ対策」の組み立て方
「脇擦れて痛い」の正体は摩擦熱と塩|起きる3つのメカニズム

まず、なぜ脇が擦れて痛くなるのかを理解しておきましょう。原因が分かれば、どこを対策すれば効くのかが見えてきます。脇擦れは「肌と肌」「肌と生地」がこすれ合う摩擦が引き金ですが、実際にはそこへ汗とウェアの条件が加わって一気に悪化します。
腕を振るたびに脇と体側が数千回こすれている
脇擦れの一次原因は、腕振りによる反復摩擦です。ランニング中は1kmあたり両腕で約1,000回、フルマラソンなら片側だけで2万回以上腕を振ります。そのたびに二の腕の内側や脇の下が体の側面(体側)と接触し、こすれ続けます。1回ずつの摩擦は小さくても、数万回の繰り返しで表皮の角質層が削れ、バリア機能が壊れて赤み・ヒリつきになります。
とくにペースが上がって腕振りが大きくなるほど接触は増え、長い距離ほど累積ダメージが大きくなります。5kmのジョグでは平気だった人が、20kmを超えたあたりで急に痛み出すのはこのためです。逆に言えば、接触部分にあらかじめ「すべる層」を作っておけば、同じ腕振りでもダメージは激減します。ここが後述する摩擦防止アイテムの出番です。
汗が乾くと塩の結晶が”紙ヤスリ”になる
2つ目の犯人は汗、正確には汗に含まれる塩分です。汗が蒸発すると塩化ナトリウムなどの結晶が肌表面とウェアに残り、ザラザラした微細な研磨剤のように働きます。濡れているうちより、汗が乾いて塩が結晶化したタイミングでこすれると一気に削れます。夏場や多汗のランナーで脇擦れが増えるのは、単に汗で濡れるからではなく、この「塩ヤスリ化」が主因です。
汗は水分がなくなっても塩は残り続けるので、長時間走るほど蓄積します。塗るタイプの保護剤が汗で流れてしまうと、その上に塩だけが残って摩擦が急増する——という悪循環も起こります。だからこそ「汗に強い保護剤」を選ぶこと、長距離では塗り直すことが効いてきます。給水所で軽く汗を拭うだけでも、塩の蓄積を減らせます。
実は、脇擦れの相談で一番多い勘違いが「汗をかくから擦れる」という思い込みです。汗そのものより、汗が乾いたときの塩と、サイズの合っていないウェアのほうがはるかに悪さをします。汗を止めることはできませんが、生地とサイズは今日から変えられます。対策の優先順位は「ウェア>塗り物>汗対策」の順で考えると効率的です。
化繊の縫い目・タグ・洗濯劣化した生地が肌を削る
3つ目はウェアそのものです。Tシャツの脇の縫い目、洗濯タグ、へたって硬くなった綿素材は、それ自体がヤスリになります。とくに脇の下は縫い目が集中する場所で、走行中はここが振り子のように動く腕の付け根と一日中こすれ続けます。新品では平気だったウェアが、何十回も洗濯してゴワついた頃に急に擦れ出すのは、生地表面の毛羽立ちと硬化が原因です。
綿100%のTシャツは汗を吸うと重く濡れたまま乾かず、塩も溜め込むため脇擦れとの相性は最悪です。走るなら吸汗速乾のポリエステル系で、縫い目が平らな「フラットシーム」加工のものを選ぶだけで擦れは大きく減ります。「安いから」「もらいものだから」と綿Tで長距離を走るのは、脇擦れを自分から招きにいくようなものだと考えてください。
初レースで「綿のイベントTシャツ+保護剤なし」で走り、20km過ぎから脇と乳首がヒリヒリ。ゴール後シャワーで激痛、下着に血がにじんでいた——という失敗は本当に多いです。原因は綿素材・塗り物なし・ぶかぶかサイズの三重奏。大会でもらった記念Tシャツをレース本番で下ろすのは避けるのが鉄則です。
太めの人・多汗の人・夏場に脇擦れが起きやすい理由
同じ距離を走っても、脇擦れの起きやすさには個人差があります。体格がしっかりしていて腕と体側の接触面積が大きい人、汗の量が多い人、そして気温と湿度が高い夏場は、摩擦・塩・蒸れの条件がすべて悪化するため擦れやすくなります。女性はスポーツブラのバンドやアンダーの縫い目が脇に当たりやすく、そこが擦れの起点になることもあります。
「自分は擦れやすい体質だ」と分かっている人ほど、予防を前提に走り方を組み立てるべきです。具体的には、走る前に必ず保護剤を塗る、縫い目の少ないインナーを1枚挟む、長距離では塗り直す、という3点をルーティン化します。体質は変えられませんが、条件は毎回コントロールできます。逆に痩せ型で汗が少ない人でも、化繊の硬い縫い目次第では擦れるので油断は禁物です。
走った直後にヒリヒリ…脇の擦れを悪化させない応急処置
すでに擦れて痛い場合の対処です。脇擦れは軽いやけど(摩擦熱による表皮のダメージ)に近い状態なので、ケアの基本は「清潔にして・保護して・こすらない」。順番を守れば軽症なら2〜3日、皮がむけても1週間ほどで落ち着きます。
まずはぬるま湯でやさしく洗い、塩と汗を落とす
最初にやるべきは洗浄です。擦れた部分には汗の塩分や皮脂、ウェアの繊維が残っており、放置すると刺激が続いて治りが遅くなります。ぬるま湯で流し、低刺激の石けんを泡立てて手のひらでそっと洗い、しっかりすすぎます。ここでゴシゴシこすったり、熱いシャワーを直撃させたりするのは逆効果。ダメージを受けた皮膚をさらに削ってしまいます。
洗ったあとは清潔なタオルで押さえるように水気を取り、完全に乾かします。濡れたままだとふやけて弱くなり、下着とこすれて悪化します。シャワーで沁みるのは傷が開いているサインなので、洗浄後の保護までをワンセットと考えてください。汗をかいた直後にケアできない外出先では、ウェットティッシュで塩を拭き取っておくだけでも進行を抑えられます。
ワセリンや保護クリームで薄く覆い、乾燥と摩擦から守る
洗って乾かしたら、保護剤で覆います。軽い赤み・ヒリつき程度なら、無香料で刺激の少ないヴァセリンのようなワセリンを薄くのばすのが手軽です。ワセリンは肌表面をコーティングして水分の蒸発を防ぎ、下着との摩擦をやわらげます。市販薬を使うなら、患部の状態に合ったものを薬剤師に相談して選びましょう。ジュクジュクが強い、範囲が広い、なかなか治らない場合は自己判断せず皮膚科へ。
ポイントは「厚塗りしすぎない」こと。乾いた清潔な肌に薄く均一にのばすのがコツで、ベタつくほど塗ると下着が張り付いて逆に不快になります。就寝前に塗って一晩保護すると、翌朝の回復が目に見えて違います。傷が乾いてかさぶたになりかけたら無理に取らず、自然に治るのを待ちましょう。肌の保護と正しいスキンケアの基本は、日本皮膚科学会などの一次情報も参考になります。
ジュクジュクした傷は絆創膏やパッドで湿潤保護する
皮がむけて浸出液が出ているような擦り傷は、乾かすより「湿潤環境」で治すほうが早くきれいに治ります。ハイドロコロイド素材の傷パッド(キズパワーパッド類)を貼ると、適度な湿り気を保ちながら外部刺激と摩擦をシャットアウトできます。脇のように動く部位は剥がれやすいので、角を丸くカットした大きめサイズを選ぶと持ちが良くなります。
ただし、感染が疑われる(膿む・熱を持つ・赤みが広がる)ときや、汚れが入ったままの傷に密閉パッドを使うのはNGです。悪化させることがあるので、その場合は通気性のある絆創膏にとどめ、必要なら受診してください。パッドは1〜2日ごと、または汗で浮いてきたら交換します。走るときは貼ったまま走らず、患部が落ち着くまでは距離を控えるのが結局は近道です。
・アルコール消毒液を擦れた肌に直接塗る(沁みるうえ回復が遅れる)
・かゆいからと爪でかく、タオルでゴシゴシ拭く
・痛いのを我慢して毎日同じ場所を擦り続ける(慢性化・色素沈着の原因)
・治りきる前に綿Tシャツで長距離を走って再発させる
制汗剤・かゆみ止めの”ついで塗り”に注意
擦れた肌に、汗を止めようとして制汗スプレーやロールオンを吹き付けるのは避けましょう。アルコールや収れん成分が傷口に沁みるうえ、バリアが壊れた肌には刺激が強すぎます。あせもと勘違いしてかゆみ止めを塗るケースもありますが、擦れによる炎症とあせもは対処が異なります。ヒリヒリして痛いなら擦れ、ポツポツかゆいならあせも寄り、と見分けるのが目安です。
迷ったら、まずは「洗って・乾かして・ワセリンで保護」というシンプルな基本に戻すのが安全です。市販の外用薬を使うなら成分表示を確認し、パッケージの用法を守ること。数日ケアしても改善しない、じくじくが広がる、色が濃く残るといった場合は、自己流を続けず皮膚科で診てもらいましょう。痛みを我慢して走り続けると、皮膚が黒ずんで残ることがあります。
走る前のひと塗りで9割防げる|摩擦防止アイテムの使い方

ここからが本題の予防です。脇擦れ対策で最も費用対効果が高いのが、走る前に接触部分へ保護剤を塗ること。数百円のワセリン一つで、あれだけ悩んだヒリヒリがほぼ消えるランナーは珍しくありません。ポイントは「何を・どこに・いつ」塗るかです。
保護剤は「擦れてから」ではなく「走る前」に塗るのが原則。脇の下・二の腕の内側・体側のこすれる部分に、乾いた清潔な肌へ薄く塗り広げます。距離が長いほど、汗で流れる前提で塗り直しを計画に入れておきましょう。
定番ワセリンは”少し厚め”に塗るのがコツ
もっとも手軽で安いのがワセリンです。ヴァセリン オリジナル ピュアスキンジェリーは無香料・無着色・防腐剤無添加で、肌表面をコーティングして摩擦をやわらげます。価格は40gで約200〜300円、大容量200gでも約555〜700円(税込、販売店により変動)と圧倒的にコスパが良く、全身どこにでも使えるのが強みです。脇擦れ入門にはまずこれで十分です。
使い方のコツは、他の用途より「やや厚め」に塗ること。薄すぎると腕振りですぐ削れてしまうため、脇の下と二の腕内側にしっかりのばします。デメリットは、汗や水に流れやすくベタつくこと、そして手が油っぽくなることです。長時間のレースでは途中で効果が切れやすいので、ジョグや短めの練習向き。汗をかく夏場のロング走には、後述の耐水性が高いアイテムのほうが安心です。
スティックバームは手を汚さず、途中で塗り直せる
手を汚さず塗りたい、レース中にも塗り直したいなら、スティックタイプのBody Glide(ボディグライド)が便利です。全米シェアの高い皮ふ保護バームで、制汗剤のように直接肌にスッと塗れます。汗や水に強い設計で、ワセリンより持ちが良いのが特長。価格は10gで1,870円、22gで2,750円、42gで3,300円(税込)と、公式サイトのBody Glide JAPANで確認できます。
スティックなので、走行中にウェアの脇口からサッと塗り直せるのが実用的。手がベタつかず、塗った後の肌もサラッとしています。デメリットはワセリンに比べて単価が高いこと。とはいえ1本で数十回分使え、必要な部位だけにピンポイントで塗れるので、トータルでは無駄が少ないです。脇・二の腕・股・足指など擦れる場所が多い人ほど、1本持っておくと安心できます。
汗に強い皮膚保護クリームでフルマラソンに備える
フルマラソンやウルトラ、トライアスロンなど長時間・大量発汗の場面で頼りになるのが、プロテクトJ1(皮膚保護クリーム)です。1回塗れば7〜8時間持続するとされ(個人差あり)、汗をかいても流れにくいのが最大の武器。価格は45mLで1,540円、90mLで2,420円、携帯に便利な15mL5本セットで2,640円(いずれも税込)と、製造元アースブルーの公式情報で確認できます。
のびが良く少量で広範囲に塗れるため、脇だけでなく乳首・股・靴擦れ対策まで全身に一本で対応できます。レース前に一度しっかり塗っておけば、フルの間ほぼ塗り直し不要というランナーも多いです。デメリットは、ワセリンより単価が高いことと、ドラッグストアより専門店・通販での入手が中心なこと。「本番でだけは絶対に擦れたくない」という勝負レース用の常備品として、一本ポーチに入れておく価値があります。メーカー公式サイトで用途を確認しておきましょう。
塗る場所・タイミングの正解を押さえる
どのアイテムを使うにせよ、塗る前提は「乾いた清潔な肌」。汗や汚れの上から塗ると密着せず、効果が半減します。塗る場所は脇の下、二の腕の内側、体側のこすれるライン。人によっては肩甲骨まわりやウェアの縫い目が当たる部分も追加します。走り出す10〜15分前に塗っておくと、肌になじんで剥がれにくくなります。
タイミングの注意点は、給水や気温で汗の流れ方が変わること。20km以上のロング走やレースでは、折り返しや給水所で一度塗り直す前提でスティックやミニサイズを携帯すると安心です。逆に、短いジョグに高価なクリームを毎回フル塗りするのはオーバースペック。距離と発汗量に応じてワセリン・バーム・クリームを使い分けるのが、賢くて財布にも優しいやり方です。
摩擦防止アイテム3種を価格・持続時間で徹底比較
ここまで紹介した3タイプを、価格・持続時間・使い勝手で並べて比較します。どれか一つが万能というより、走る距離とシーンで使い分けるのが正解です。以下は各公式情報をもとにランニングスタイルが整理した比較表です。
| 製品 | 価格(税込) | タイプ・持続 | 向くシーン |
|---|---|---|---|
| ヴァセリン ピュアスキンジェリー | 40g 約200〜300円/200g 約555〜700円 | ワセリン。安価だが汗で流れやすい | ジョグ・短〜中距離、まず試す人 |
| Body Glide body | 10g 1,870円/22g 2,750円/42g 3,300円 | スティック。汗・水に強く塗り直し容易 | 手を汚したくない人・レース中の塗り直し |
| プロテクトJ1 | 45mL 1,540円/90mL 2,420円 | クリーム。1回で7〜8時間持続(個人差あり) | フル・ウルトラなど長時間の勝負レース |
コスパ最優先ならヴァセリン一択
とにかく安く始めたい、まず脇擦れ対策を試したいなら、ヴァセリン オリジナル ピュアスキンジェリーが最有力です。40gで200〜300円台、家に一つあれば脇・唇・かかとまで全身に使え、無香料・防腐剤無添加で肌にやさしいのが魅力。脇擦れの原因が本当に摩擦なのかを確かめる「お試し」としても最適です。
ただし前述のとおり、汗や水で流れやすく、長時間のロング走やレースでは途中で効果が切れます。ベタつきと手の油っぽさもデメリット。日々のジョグや10〜15km程度の練習ならこれで十分ですが、フルマラソン本番の全身ガードには耐水性の高いアイテムを併用するのがおすすめです。「普段はワセリン、本番はクリーム」という二段構えが、コストと安心のバランスが良いです。
塗り直しやすさで選ぶならBody Glide
手を汚さず、走行中でもサッと塗り直したい人にはBody Glide bodyが向きます。スティックタイプで制汗剤のように直塗りでき、汗や水に強いので持ちも良好。10gの携帯サイズなら1,870円で、ポーチやポケットに入れてレース中に脇や股へ塗り直せます。塗った後の肌がサラッとしているのも、ベタつきが苦手な人に好評です。
デメリットは単価の高さ。ワセリンに比べれば割高で、大量に厚塗りする使い方には不向きです。とはいえピンポイントで必要な部位だけに塗れるため、実際の消費は少なく、1本で長く使えます。脇だけでなく足指・股・腕など擦れる箇所が複数ある中〜上級ランナーが、常備アイテムとして1本持っておくのに最適な選択肢です。
フル本番の絶対防御はプロテクトJ1
「レース本番だけは何がなんでも擦れたくない」なら、持続力に振ったプロテクトJ1が心強い相棒です。1回塗れば7〜8時間持続する設計(個人差あり)で、汗をかいても流れにくく、フルマラソンをほぼ塗り直しなしでカバーできます。のびが良く、脇・乳首・股・靴擦れまで一本で全身をガードできるのも長距離ランナー向きです。
45mLで1,540円と、1回あたりのコストは決して高くありません。注意点は、ドラッグストアより専門店・通販での購入が中心で、思い立ってすぐ買いにくいこと。レース前に余裕をもって用意しておきましょう。普段の練習はワセリンやバームで十分なので、これは「勝負レース用の切り札」として1本常備しておくのが賢い使い方です。
ウェアと着方を変えれば脇擦れは根本から減る
塗り物は対症療法として強力ですが、根本対策はウェア選びです。そもそも擦れない生地・縫い方・サイズを選べば、保護剤の消費も減り、擦れのリスク自体が下がります。ここは一度見直すと効果が長く続く、投資対効果の高いポイントです。マラソン本番の服装選びは以下の記事も参考になります。

「マラソン当日、どんなウェアで走ればいいのか分からない」——初フルマラソンを控えたランナーが必ずぶつかる悩みです。シューズはあれこれ調べて買ったのに、上下のウェ…
縫い目の少ないシームレスインナーを1枚挟む
脇擦れに悩むなら、まず吸汗速乾のインナーを1枚着ることをおすすめします。肌に直接触れる面を、縫い目の少ないシームレス設計・フラットシームのインナーにすると、脇の下でこすれる相手が「硬い縫い目」から「なめらかな生地」に変わり、摩擦が大きく減ります。汗も肌から素早く吸い上げて拡散するため、塩の結晶化も抑えられます。
選ぶときは、脇や肩の縫い目が平らに処理されているか、体にほどよくフィットするかをチェック。ダボつくと生地がたるんでこすれるので、圧迫しすぎない範囲でジャストサイズを選びます。デメリットは真夏に一枚増えると暑いこと。ただし最近の速乾インナーは薄手で通気性が高く、汗冷え防止にもなるため、暑さのデメリットは思うほど大きくありません。擦れやすい人には十分お釣りがきます。
綿は避け、吸汗速乾×フラットシームを選ぶ
アウターのトップスも素材が命です。綿100%は汗を吸って重く濡れ、乾かず塩を溜め、擦れの温床になります。走るならポリエステルやナイロンの吸汗速乾素材で、脇の縫い目がフラットシーム処理されたものを選びましょう。タグは肌に当たらない位置か、プリントタグ(縫い付けでないもの)だと擦れにくいです。
ランニング専用ウェアが理想ですが、まずは手持ちの中でいちばん綿含有率が低く、縫い目がゴロつかないものを選ぶだけでも違います。注意したいのは、何度も洗濯してゴワついた古い速乾ウェア。表面が毛羽立って硬くなると擦れやすくなるので、擦れが増えてきたら買い替えのサインです。安さだけで綿Tを選ばないこと——これが脇擦れ対策の地味だけど効く鉄則です。
サイズは”ジャストか少しタイト”、ぶかぶかが擦れる
意外と見落とされるのがサイズです。脇擦れ対策では、ウェアは大きめよりジャスト〜わずかにタイトが正解。ぶかぶかだと生地が余って腕振りのたびに脇でバサバサ動き、その動いた生地が肌をこすります。ぴったりめのウェアは体と一緒に動くので、生地と肌の相対的なズレが減り、擦れにくくなります。
コンプレッション系やフィット感のあるインナーが脇擦れに強いのはこのためです。ただしタイトすぎて縫い目が食い込むと、今度はそこが擦れの起点になるので、締め付けすぎない範囲で。試着できるなら、腕を大きく振る動作をして脇に生地のたるみや縫い目の当たりがないか確認しましょう。通販で買うときは、レビューでサイズ感(大きめ・小さめ)を必ずチェックすると失敗が減ります。
ゼッケン・リュック・心拍ベルトの擦れも見落とさない
脇まわりの擦れは、ウェア以外のギアが原因のこともあります。ザックのショルダーハーネスやウエストポーチのベルト、胸に付ける心拍センサーのストラップ、安全ピンで留めたゼッケンの角などが、走行中に脇や体側をこすり続けます。とくにトレイルやウルトラでザックを背負う場合、脇の下のこすれは深刻になりがちです。
対策は、当たる部分にあらかじめ保護剤を塗る、ベルトの位置と長さを調整して脇に食い込まないようにする、心拍ベルトは締めすぎないこと。ゼッケンは安全ピンではなくマグネット式や専用ベルトで固定すると、角が擦れる問題を回避できます。ギア由来の擦れは「その装備を使う日だけ」起きるので、いつもと違う場所が擦れたら装備を疑ってみてください。
脇だけじゃない|乳首・股・腕の擦れもまとめてケア
脇が擦れる人は、たいてい他の部位も擦れています。原因(摩擦・汗・生地)が同じだからです。ここでは脇以外の代表的な擦れと、まとめて対策する考え方を紹介します。対処の基本は脇とまったく同じ「保護剤+ウェア+サイズ」です。
ランナー乳首(血がにじむ)はテープとワセリンで防ぐ
男性ランナーに多いのが、乳首とシャツがこすれて出血する「ランナーズニップル」です。ゴールしてシャツを見たら胸に2本の血の線が——という経験者は少なくありません。防ぐには、走る前に乳首へワセリンやプロテクトJ1を塗るか、医療用テープ・専用ニップルバンドで物理的に覆うのが確実。テープは汗で剥がれにくい防水タイプを選びます。
とくにフルマラソンなど長距離、綿Tシャツ、雨の日は出血リスクが跳ね上がります。一度傷つくとシャワーで悶絶するほど沁みるので、「今日は長い」と分かっている日は予防必須。女性はスポーツブラのフィットで擦れを防げますが、アンダーバンドの縫い目が擦れる場合は同様にワセリンで保護します。脇と乳首はセットで対策しておくと安心です。
股ずれ(内もも)はインナー+バームで二重ガード
内ももがこすれる股ずれも、脇擦れと双璧の悩みです。太ももの内側同士、または太ももとインナーがこすれて赤くヒリヒリします。対策は、擦れる範囲にワセリンやバームを塗ることに加え、太ももを覆うインナーパンツやサポートタイツ、ライナー付きショーツを履くこと。生地で物理的に肌同士の接触を断つのが根本策です。
ランニング用の短パンやレーシングショーツにはライナー(インナーパンツ)付きのものが多く、これだけで股ずれがかなり減ります。ショーツ選びの詳細は下の記事も参考にしてください。デメリットは夏の暑さですが、最近は薄手で通気性の高いモデルが多く、股ずれの痛みに比べれば許容範囲です。脇と同じく「塗る+覆う」の二重ガードが効果的です。

「ランニングの短パンって、どれを買っても同じでしょ?」——そう思って部屋着のハーフパンツで走り始めた人ほど、5kmを過ぎたあたりで太ももの擦れや汗のベタつきに悩…
フルマラソンで、スタート前にワセリンを塗ったから安心と塗り直しを一切しなかった結果、30km過ぎに汗で保護剤が流れ、脇・股・乳首が一斉に擦れて満身創痍でゴール——という失敗も定番です。長時間走では汗で保護剤が落ちる前提で、給水所や折り返しで塗り直せるスティックやミニクリームを携帯しておきましょう。
二の腕・脇の下の汗荒れとあせもを見分ける
脇の下や二の腕の内側は、擦れだけでなく汗によるかぶれ・あせもも起きやすい場所です。ヒリヒリ痛いなら摩擦による擦れ、赤いポツポツでかゆいならあせも・汗荒れ寄り、と大まかに見分けます。対処が違い、擦れは「保護してこすらない」、あせもは「汗を残さず清潔・乾燥を保つ」が基本です。両方が混在することもあります。
汗をかいたらこまめに拭く、通気性の良いウェアで蒸れを減らす、帰宅後は早めに洗って乾かす、といったケアはどちらにも有効です。市販薬を使う場合は擦れ用とかゆみ用で成分が異なるため、症状に合わせて選びましょう。数日で改善しない、範囲が広がる、ジュクジュクするといった場合は自己判断せず皮膚科を受診してください。痛みやかゆみを我慢して走り続けると慢性化します。
レベル別・季節別の脇擦れ対策|自分に合う組み合わせ方
最後に、走力と季節に応じた対策の組み立て方を整理します。やることは同じ「保護剤+ウェア+塗り直し」でも、力の入れどころが変わります。自分の状況に近いものを選んで、今日から取り入れてみてください。
- ☑ 初心者:走る前にワセリンを脇へ、綿Tをやめて速乾ウェアに
- ☑ 中級者:スティックバーム常備+シームレスインナーを1枚
- ☑ 上級者:レースは持続型クリーム+給水所で塗り直し
- ☑ 全レベル共通:擦れたら我慢せず洗って保護、悪化は皮膚科へ
初心者(完走目標):まずワセリンと速乾ウェアで走る
これから走り始める、月間走行距離が少ない完走目標のランナーは、お金をかけずに基本を押さえるのが正解です。やることは2つ。走る前に脇と二の腕の内側へヴァセリンを薄く塗ること、そして綿Tシャツをやめて吸汗速乾のシャツに替えること。この二つだけで、初心者が悩む脇擦れの大半は解消します。
まだ距離が短いので、汗で流れやすいワセリンでも十分間に合います。高価なクリームやバームを最初から揃える必要はありません。まずワセリンで「塗ると擦れない」を体感し、走る習慣が定着してきたら次のステップへ。注意点は、擦れが出たら我慢せず早めにケアすること。初期のうちに正しい習慣をつけておくと、距離が伸びても擦れに悩まされにくくなります。
中級者(サブ4〜サブ5):バーム常備とインナーで安定
ハーフやフルに挑戦し、20km以上のロング走もこなすサブ4〜サブ5層は、ワセリンだけでは途中で切れる場面が増えてきます。ここでスティックタイプのBody Glideを1本常備し、加えて縫い目の少ないシームレスインナーを1枚着るのがおすすめ。塗り直しやすさと生地由来の擦れ低減で、長い距離でも安定します。
この層は練習量が多い分、脇だけでなく乳首・股・足指など擦れる箇所も増えがちです。バーム1本で複数部位に対応できるのは効率的。ロング走やレースでは、給水のタイミングで擦れそうな部位に塗り直す習慣をつけましょう。ウェアも定期的に見直し、へたった速乾シャツは買い替える。擦れを気にせず腕を大きく振れると、フォームもタイムも安定してきます。
上級者(サブ3.5以上):本番はクリーム+塗り直し戦略
サブ3.5を狙う上級者は、擦れ一つがタイムとメンタルを削るため、対策を戦略的に組みます。レース本番はプロテクトJ1のような持続型クリームを事前にしっかり塗り、脇・乳首・股・足指まで全身をガード。フルなら塗り直し不要のことも多いですが、ウルトラや猛暑のレースでは携帯用も用意して、後半に塗り直せる備えをしておきます。
ウェアはレース用の軽量・フィット系を、必ず本番前のロング走で「擦れないか」テストしてから使うこと。新品をぶっつけ本番で下ろすのは、この層でも失敗のもとです。装備が増えるとザックや心拍ベルト由来の擦れも出るので、当たる部分は事前保護を徹底。細部まで詰めておけば、擦れに気を取られず走りに集中できます。
夏と冬で変わる脇擦れ対策のポイント
季節でも力点が変わります。夏は大量発汗で塩の結晶化と保護剤の流失が進むため、耐水性の高いアイテムと塗り直しが重要。通気性の良い薄手ウェアで蒸れを減らすのも効果的です。汗と暑さの対策は夏ランの基本とセットで考えると、擦れも熱中症も同時に防げます。夏場の走り方は下の記事も参考にしてください。

「冬は調子よく走れていたのに、夏になった途端キロ1分も遅くなった」「30分走っただけで頭がクラクラする」——夏のランニングでこう感じるのは、あなたの走力が落ちた…
一方、冬は汗が少なく擦れにくい反面、空気の乾燥で肌のバリアが落ち、わずかな摩擦でも荒れやすくなります。走る前の保護に加え、日頃の保湿ケアが効いてきます。重ね着で生地の枚数が増えると縫い目由来の擦れも起きるので、肌に触れる一枚は縫い目の少ない速乾インナーに。季節に合わせて対策の重心を移すのが、一年中擦れずに走るコツです。
まとめ|脇擦れて痛いは「塗る・覆う・こすらない」で卒業できる
ランニングで脇が擦れて痛いのは、腕振りによる摩擦、汗が乾いてできる塩の結晶、そして化繊の縫い目や合わないサイズのウェアが重なって起きます。裏を返せば、この3つに手を打てば擦れはほぼ防げるということ。根性で我慢するものでも、走るのをあきらめる理由でもありません。走る前のひと塗りとウェアの見直しで、あのヒリヒリから卒業できます。
すでに痛いときは「洗って・乾かして・ワセリンで保護」の基本に戻り、こすらないこと。じくじくが広がる、数日で治らない、色が濃く残るといった場合は、我慢せず皮膚科を受診してください。予防と適切なケアを両立させれば、擦れは怖くなくなります。
- 原因は3つ:腕振りの摩擦・汗の塩・化繊の縫い目とサイズ
- まず塗る:走る前に脇と二の腕内側へ保護剤を薄く塗る
- 使い分け:ジョグはワセリン、塗り直しはBody Glide、フルは持続型クリーム
- ウェアを見直す:綿をやめ、速乾×フラットシーム×ジャストサイズに
- 長距離は塗り直す:汗で流れる前提で携帯し、給水所で塗り直す
- 擦れたら:洗って乾かしワセリンで保護、こすらない
- 悪化したら:自己流を続けず皮膚科へ相談する
最初の一歩は、次に走る前に脇と二の腕の内側へワセリンをひと塗りしてみること。たったこれだけで「あれ、擦れない」と驚くはずです。そこから、距離やレースに合わせてバームやクリーム、ウェアへと対策を育てていけば、擦れを気にせず腕を大きく振って走れるようになります。痛みから解放されれば、ランニングはもっと自由で楽しくなります。
※各製品の価格・仕様は2026年7月時点で各メーカー公式サイト等をもとに記載しています。最新情報は各公式サイトでご確認ください。肌トラブルが改善しない場合は医療機関を受診してください。

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