VO2max予想タイムが当たらない3つの理由|ガーミンの数値とVDOT換算で正確に予測する方法

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ガーミンやApple Watchに表示される「VO2max」と、それを元にした「予想タイム」。レースに一度も出ていないのに、自分のフルマラソン完走タイムが数字で示されるのは便利な機能です。ところが「表示された予想タイムを信じてサブ4ペースで突っ込んだら、30km地点で脚が止まった」という声は後を絶ちません。VO2maxの予想タイムは、仕組みと限界を知って使えば強力な指標になりますが、鵜呑みにすると裏切られます。この記事では、VO2maxからレースタイムが計算できる理屈、VDOTを使った換算表、そしてガーミンの数値が実走とズレる理由までを、具体的な数値で整理します。読み終えるころには、自分の数字をどう信じてどう疑うかが判断できるようになります。

🏃 この記事でわかること
・VO2maxから予想タイムが計算できる仕組み(VDOTという橋渡し)
・VO2max(VDOT)別の5km〜フルマラソン予想タイム換算表
・ガーミンの予想タイムが実走より速く出る具体的な理由と補正法
・初心者〜上級者がVO2maxを伸ばすための練習メニュー
目次

そもそもVO2maxとは?予想タイムの精度を決める「最大酸素摂取量」の正体

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VO2maxは「1分間に取り込める酸素量」を体重で割った数値

VO2max(最大酸素摂取量)とは、運動中に体が1分間に取り込んで使える酸素の最大量を、体重1kgあたりで表した数値です。単位はml/kg/分で、数値が大きいほど多くの酸素を筋肉に届けられる=長時間速く走れる持久力が高いことを意味します。たとえば同じ体重60kgでも、VO2max40の人と50の人では、同じペースで走ったときの余裕度がまるで違います。ランニングにおいて持久力の「エンジンの排気量」にあたる指標だと考えると分かりやすいです。ただし注意したいのは、VO2maxはあくまで上限値であり、その能力を100%レースで使い切れるかは別問題だという点です。エンジンが大きくても、燃費やドライバーの腕が悪ければタイムは伸びません。この前提を押さえておくと、後述する「予想タイムが当たらない理由」がすっと腹落ちします。

一般人とランナーで倍近く違う|VO2maxの平均値の目安

VO2maxは運動習慣で大きく変わります。運動をしていない30〜50代男性の平均はおよそ35〜40ml/kg/分、女性で30〜35程度が目安です。一方、週に数回走る市民ランナーになると45〜55、サブ3.5を狙うレベルでは55〜60前後まで上がります。トップマラソン選手では70〜85に達することもあります。つまり走り込むことで一般人の1.3〜1.5倍程度まで引き上げられるわけです。自分の数値が平均より低くても落ち込む必要はありません。伸びしろが大きいということだからです。逆に注意したいのは、加齢とともにVO2maxは10年で5〜10%ほど自然低下する点です。40代後半から「同じ練習なのにきつい」と感じるのはこのためで、現状維持でも立派な成果だと捉えてよいでしょう。

実はVO2maxが高い=速いとは限らない|ランニングエコノミーの罠

意外と知られていませんが、VO2maxが同じ2人でも、レースタイムは数分単位で変わることがあります。理由は「ランニングエコノミー(走りの燃費)」の差です。これは一定ペースで走るときにどれだけ少ない酸素で済むかを示す効率の指標で、フォームの無駄や接地時間、筋肉の使い方で決まります。VO2maxという排気量が同じでも、燃費の良いエンジンのほうが速く長く走れるのです。実際、エリート選手の中にはVO2maxが平凡でも世界レベルで戦う人がいます。市民ランナーが伸び悩んだとき、VO2maxの数字ばかり追ってフォーム改善を放置すると、頭打ちになりやすいので注意が必要です。予想タイムを縮めたいなら、エンジンの拡大と燃費改善は両輪で進めるべきだと覚えておいてください。

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なぜVO2maxからレースタイムが「予想」できるのか

VO2maxとレースタイムの間には強い相関があります。マラソンのような有酸素運動では、どれだけ多くの酸素を筋肉に供給し続けられるかがペースの上限を決めるため、VO2maxが分かれば「理論上この距離をこのくらいで走れるはず」という値を逆算できるのです。この逆算を体系化したのが、後述するジャック・ダニエルズ博士のVDOTという指標です。ただし「予想」という言葉どおり、これは現在の自己ベストや測定値から導く推定値にすぎません。当日の気温、睡眠、補給、コースの高低差といった変動要因は計算に含まれていません。だからこそ予想タイムは「目標設定の出発点」として使い、最終的なペース判断は実走データと体感で微調整するのが正しい付き合い方になります。

🏃 押さえておきたいポイント
VO2maxは「持久力エンジンの排気量」。予想タイムを決めるのはエンジンの大きさ(VO2max)と燃費(ランニングエコノミー)の掛け算であり、数字が高いだけでは速くなりません。

VO2maxからレースタイムを予想する仕組み|VDOTという橋渡し

VDOTはダニエルズ博士が作った「走力指数」

VO2maxの数値を、そのままレースタイムに変換するのは簡単ではありません。そこで使われるのがVDOT(ブイドット)です。VDOTは、アメリカの著名なランニングコーチであるジャック・ダニエルズ博士が考案した走力指数で、レースタイムから逆算した「実戦で使えるVO2max」とも言えます。たとえば5kmを25分00秒で走れる人はVDOT38、22分00秒ならVDOT44というように、タイムから一つの数値が割り出されます。この指数の優れた点は、1つの距離の実力から他の距離の予想タイムやトレーニングペースまで一括で導ける点です。市民ランナーが目標設定や練習強度の決定に使うなら、ラボ測定が必要なVO2maxそのものより、レース結果から出せるVDOTのほうが実用的です。

VO2maxとVDOTは似て非なるもの|混同に注意

ここが多くのランナーがつまずくポイントです。VO2maxは実験室でマスクを着けて測る生理学的な最大酸素摂取量で、VDOTはレースタイムから逆算した実戦的な走力指数です。両者は数値が近くなるよう設計されていますが、完全な同義ではありません。たとえばガーミンが表示する「VO2max48」と、5kmのレースタイムから出したVDOTが45ということは普通に起こります。この3の差が、フルマラソンでは10分以上の予想タイムのズレになって現れます。混同したまま「ガーミンのVO2maxをVDOT表に当てはめる」と、楽観的すぎる目標を設定しがちです。後半で詳しく触れますが、トレーニングペースの根拠にするなら、推定値より実際のレースタイムから出したVDOTを優先するのが鉄則です。

1本のレースタイムから全距離の予想タイムが出せる理由

VDOTの最大の魅力は、たった1本のレース結果から他の全距離を予想できる点にあります。たとえば10kmを50分(VDOT40)で走れた人は、同じ走力ならハーフは約1時間51分、フルマラソンは約3時間50分が理論上の予想タイムになります。これは過去の膨大なレースデータから、距離間の関係性が統計的に安定していることが分かっているためです。最近5kmや10kmのレースに出た人は、その1本を入力するだけで、まだ走ったことのないフルの目標が見えてきます。ただし、短い距離の結果から長い距離を予想するほど誤差は大きくなります。5kmの実力をそのままフルに当てはめると、スタミナや補給の壁を計算に入れていないぶん、予想が速すぎる傾向がある点には注意してください。

計算の出典は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」

本記事の予想タイム換算は、ジャック・ダニエルズ博士の著書『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』で公開されているVDOT対応表を基にしています。この表は1500m・5000m・10000m・ハーフ・フルマラソンのタイムと、それぞれに対応するトレーニングペース(イージー・マラソン・閾値・インターバル・レペティション)で構成されており、世界中の指導現場で40年以上使われ続けている定番です。トレーニング理論の根拠を確認したい場合は、日本陸上競技連盟(JAAF)などの公的機関が公開する指導資料も参考になります。出所のはっきりした表を使うことが、信頼できる目標設定の第一歩です。

📊 データで見る
VDOTは1本のレースタイムから全距離の予想タイムと5種類の練習ペースを導ける指数。出典は『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』で、世界の指導現場で標準的に使われています。

【換算表】VO2max・VDOT別の5km〜フルマラソン到達タイム一覧

【換算表】VO2max・VDOT別の5km〜フルマラソン到達タイム一覧の解説画像

VDOT30〜60の予想タイム換算表

下の表は、VDOT(おおむねVO2maxに対応)ごとの各距離の予想タイムをまとめたものです。まず直近のレースタイムに一番近い行を探し、その行を横に読めば他の距離の到達目安が分かります。たとえば10kmが50分前後なら、あなたはVDOT40の行。フルは約3時間50分が理論値です。VO2maxの数値は厳密にはVDOTと一致しませんが、近似値として同じ行で読むと実用上は十分役立ちます。あくまで理論値であり、当日の条件で前後する点は忘れないでください。

VDOT(≒VO2max)5km10kmハーフフル
3030:401:03:462:21:044:49:17
3527:0056:032:04:134:16:03
4024:0850:031:51:093:49:45
4521:5045:161:40:203:28:26
5019:5741:211:31:353:10:49
5518:2238:061:24:182:56:01
6017:0335:221:18:092:43:25
出典:『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』VDOT対応表を基に作成

サブ4・サブ3.5に必要なVO2maxの目安【ランニングスタイル調べ】

「結局、目標タイムにはどのくらいのVO2maxが要るのか」を逆引きでまとめたのが下表です。換算表をランナー目線で整理し直した独自のまとめになります。サブ5なら無理のない走り込みで届く範囲、サブ4はVO2max48前後が一つの壁、サブ3.5になると55前後の高い持久力が必要です。自分の現在地と目標のギャップが何ポイントあるかを把握すると、必要な期間と練習量が見えてきます。

目標タイム必要VDOT(≒VO2max)目安レベル
フル完走(5時間)約30〜33初心者
サブ4.5(4時間30分)約42〜43中級者
サブ4(4時間)約47〜48中級者
サブ3.5(3時間30分)約54〜55上級者
ランニングスタイル調べ(VDOT対応表より算出)

自分のVO2maxを知る3つの方法

自分の数値を知る方法は大きく3つです。1つ目はGPSウォッチでの推定で、ガーミンなどが走行中の心拍とペースから自動算出します。最も手軽ですが推定誤差があります。2つ目はレースタイムからのVDOT換算で、5kmや10kmの全力タイムを上の表に当てはめる方法です。実戦の結果に基づくため、トレーニングペース設定にはこれが最も信頼できます。3つ目は大学や専門施設でのラボ測定で、マスクを着けてトレッドミルで追い込む正確な方法ですが、費用と手間がかかります。市民ランナーの実用上は「2つ目のレース換算を軸に、1つ目のウォッチで日々の変化を追う」のが現実的です。1つ目だけを信じて目標を決めると、後述の失敗につながりやすいので気をつけましょう。

ガーミンのVO2max予想タイムはなぜ当たらないのか

ガーミンのVO2maxはラボ測定値に近く、VDOTより高めに出やすい

ガーミンの予想タイムが実走より速く出る最大の理由は、表示されるVO2maxが「現在の最大能力」を推定した値だからです。ラボ測定に近い思想で、心拍とペースの関係から「理論上これだけの酸素を使えるはず」という上限を示します。一方、実際のレースタイムから出すVDOTは、スタミナ切れやペース配分のミスまで織り込んだ「使い切れた実力」です。そのためガーミンのVO2maxはVDOTより2〜4ポイント高く出ることが珍しくありません。この差がフルマラソンでは10〜15分の予想タイムのズレになります。ウォッチが「サブ4可能」と言っても、それは絶好調で完璧に走り切った場合の上限値だと理解しておくと、過信を避けられます。

予想タイムが楽観的に出る2つの理由

ガーミンの予想が楽観的になる理由は2つあります。1つは「実走しない距離ほど誤差が大きい」こと。多くの人は5〜10kmの短い距離を走る機会が多く、ウォッチはその短距離データを長距離に外挿します。しかしフルには30kmの壁や補給の問題があり、短距離の勢いをそのまま延長すると速すぎる予想になります。もう1つは「コンディションを考慮しない」こと。気温30度の真夏でも、坂だらけのコースでも、予想タイムは平地・好条件を前提に算出されます。実際のレースは気温が5度上がるごとにペースが2〜3%落ちると言われ、この補正がないぶん予想は甘くなります。だからこそウォッチの数字は目安と割り切り、当日条件で下方修正する前提で使うべきです。

⚠️ 失敗パターン①:ウォッチの予想を信じてサブ4設定→30kmで撃沈
原因:5km・10kmの好調データから出た楽観的な予想タイムを、そのままフルの目標ペース(キロ5分40秒)に設定。スタミナと補給の準備が追いつかず、30km過ぎで失速。
対策:フルの目標は「直近のハーフ実測タイム×2+5〜10分」で見積もり、最初の5kmはあえて予想ペースより10秒遅く入る。

ガーミンの心拍ベース推定は、トレンドを見る道具として優秀

では、ガーミンのVO2maxは役に立たないのかというと、そうではありません。むしろ「日々の変化(トレンド)を追う」用途では非常に優秀です。絶対値はVDOTとズレても、走り込みでVO2maxが45から47に上がった、夏バテで43に下がった、といった相対的な増減は走力の変化を素直に反映します。これは走行中の心拍データを継続的に拾えるウォッチならではの強みです。月単位で数値が上向いていれば練習は正しい方向に進んでいる証拠ですし、停滞すれば練習内容の見直しサインになります。絶対値で一喜一憂せず、3ヶ月の流れで読むのが賢い使い方です。心拍を活用したトレーニングの基礎は、心拍ゾーンの理解から始めると効果的です。

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👟 ランナー目線の本音
ウォッチの予想タイムは「今の自分の天井」を示すもの。当日のコンディションや後半の失速まで面倒は見てくれません。レースの目標設定は予想タイムから5〜10%差し引いて考えるくらいが、結果的に気持ちよく走り切れます。

理論値と実走のギャップを埋める3つの調整法

直近のレースタイムを基準にする(推定値より実測優先)

予想タイムを現実に近づける最も確実な方法は、ウォッチの推定VO2maxではなく、直近の実際のレースタイムを基準にすることです。3ヶ月以内に走った5km・10km・ハーフのタイムをVDOT表に当てはめ、そこから他距離を予想します。実走タイムには、その人のスタミナやペース配分の癖まで含まれているため、推定値より格段に精度が高くなります。特にフルの予想は、5kmより距離の近いハーフの実測から導くほうが信頼できます。注意点として、レースが半年以上前なら走力が変わっている可能性があるため、その場合はペース走やタイムトライアルで現状の力を測り直してから当てはめましょう。古いデータでの予想は、良くも悪くも今の自分を映しません。

気温・コース高低差で5〜10%の補正をかける

予想タイムは平地・好条件が前提なので、当日の環境に合わせた補正が欠かせません。一般に、最適な気温(10〜15度前後)から気温が5度上がるごとにマラソンタイムは2〜3%遅くなると言われます。真夏のレースなら予想から5〜10%上乗せして目標を立てるのが現実的です。コースの高低差も同様で、累積標高が大きいコースはフラットなコースより明確に時間がかかります。たとえば予想タイムがサブ4ちょうどの人が真夏の起伏コースに出るなら、4時間15分前後を現実的なゴールに据えるべきです。この補正を怠ると、序盤で予想ペースを守ろうとして後半に大失速します。条件が悪い日は「予想を守る」のではなく「予想を捨てて体感で走る」勇気も必要です。

距離が伸びるほど予想は外れる|持久係数という考え方

VDOTによる予想は理論上どの距離でも成立しますが、実際には距離が伸びるほど個人差(持久係数)が大きく出ます。同じ5kmタイムの2人でも、長い距離を粘れるスタミナ型と、短距離が得意なスピード型では、フルの結果が10分以上変わることがあります。スピード型の人が5kmの実力でフルを予想すると、実走では予想より遅くなりがちです。自分がどちらのタイプかは、5kmのVDOTと、過去のハーフやフルから出したVDOTを比べれば分かります。フルのVDOTのほうが低ければスタミナ型ではなくスピード型で、長距離向けの走り込みが課題だと判断できます。予想タイムを長距離に適用するときは、この自分の傾向を必ず加味してください。

🏃 押さえておきたいポイント
精度の高い予想は「直近の実測タイム」が出発点。そこに気温・高低差で5〜10%、自分のスタミナ傾向を加味して下方修正すると、実走とのズレがぐっと小さくなります。

レベル別・VO2maxの伸ばし方|数値を底上げする3大トレーニング

初心者(完走目標):まずは週3回のジョグで土台を作る

VO2maxがまだ30台の初心者がいきなり高強度練習をすると、故障とモチベーション低下を招きます。まずは会話できるペース(キロ7〜8分)のジョグを週3回、1回30〜40分から始め、有酸素能力の土台を作るのが最優先です。走り始めの数ヶ月はVO2maxが最も伸びやすい時期で、月間100kmを目安に走り込むだけで数ポイント上がることも珍しくありません。この段階では速く走る必要はなく、走る習慣を切らさないことが何より効きます。注意点は、距離や頻度を一気に増やさないこと。週の走行距離の増加は前週比10%以内に抑えるのが、故障を防ぎながらVO2maxを伸ばす鉄則です。焦らず土台を厚くした人ほど、後の伸びが大きくなります。

中級者(サブ4〜5):インターバル走でVO2maxを直接刺激

土台ができた中級者がVO2maxを効率よく上げるなら、インターバル走が最も効果的です。VO2maxは、その能力の95〜100%に相当する強度で走る時間が長いほど鍛えられます。具体的には、1000mを5kmレースペースで走り、間に200mのジョグを挟む、これを5本といったメニューが定番です。きついペースで心肺を限界近くまで追い込むことで、酸素を取り込む能力そのものが向上します。週1回、他の日のジョグと組み合わせるのが基本です。ただし高強度ゆえ故障リスクも高いため、必ず15分以上のウォームアップを行い、疲労が抜けない週は無理に入れないことが大切です。やりすぎは逆効果で、週2回以上は中級者には過剰になりがちです。

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上級者(サブ3.5以上):閾値走とロング走で「使える」VO2maxに

VO2maxが55前後に達した上級者は、数値そのものより「その能力をフルで使い切る力」が課題になります。ここで効くのが閾値走(テンポ走)です。乳酸が急増し始めるギリギリのペース、おおむね20〜30km走のレースペース付近で20〜40分走り続けることで、高い出力を長時間維持する持久力が磨かれます。加えて、30km以上のロング走で後半の失速耐性とランニングエコノミーを高めることが、予想タイムを実走で達成する鍵になります。注意点は、上級者になるほどVO2max自体の伸びは鈍化すること。数値の頭打ちに焦るより、同じVO2maxでいかに効率よく走るか、つまり燃費の改善に主眼を移すのがこのレベルの正攻法です。

✅ 今日からできるアクション
  1. Step1: 直近のレースタイム(なければ5kmタイムトライアル)を換算表に当てはめ、現在のVDOTを把握する
  2. Step2: 目標タイムに必要なVDOTとの差を確認し、ギャップを埋める期間を見積もる
  3. Step3: レベルに合った練習(初心者=ジョグ/中級者=インターバル/上級者=閾値走)を週1回組み込む

VO2maxは数週間で頭打ち|伸びしろと限界を知る

知っておきたいのは、VO2maxには遺伝的な上限があり、トレーニングで伸ばせる幅にも限界があるという事実です。運動を始めた人なら数ヶ月で10〜20%伸びることもありますが、ある程度鍛えた人がさらに上げるのは容易ではなく、数値は数週間〜数ヶ月で頭打ちになります。ここで数字が止まったからと焦って練習量を増やすと、オーバートレーニングで逆に低下することもあります。VO2maxが頭打ちになったら、それは「次はランニングエコノミーとスタミナで勝負するフェーズに入った」というサインです。同じエンジンで燃費を上げるフォーム改善や閾値走に軸足を移すことで、VO2maxが横ばいでも予想タイムは縮められます。数字の限界=成長の限界ではありません。

VO2maxを過信した人がハマる失敗パターンと対策

失敗パターン②:VO2maxだけ追ってフォームを放置→タイムが伸びない

よくある失敗が、VO2maxの数値ばかりを追いかけ、フォーム改善を後回しにするケースです。VO2maxは順調に上がっているのに、なぜかレースタイムが頭打ち、という人の多くがこのパターンに陥っています。原因は前述のランニングエコノミーの低さです。エンジンは大きくなっても、無駄の多いフォームで酸素を浪費していれば、その能力をタイムに変換できません。対策はシンプルで、月に一度はフォームの点検日を設けること。接地のたびにブレーキがかかる過度なかかと着地、上下動の大きい走り、力みのある腕振りを動画で確認し、ピッチを上げる意識を持つだけでも燃費は改善します。数値が伸びてもタイムが止まったら、エンジンではなく走りの効率を疑うのが正解です。

数値の上下に一喜一憂しない|測定誤差の正体

ウォッチのVO2maxが1〜2ポイント上下しただけで気分が乱れる人は少なくありませんが、これはほとんどが測定誤差です。GPSウォッチのVO2maxは、走行中の心拍とペースから推定する仕組みのため、睡眠不足や暑さで心拍が高めに出た日は数値が下がり、コンディションが良い日は上がります。つまり走力が変わっていなくても、日々2〜3ポイントは普通に変動します。1回ごとの数値ではなく、4〜8週間の移動平均で傾向を見るのが正しい読み方です。短期の上下に振り回されて練習計画をころころ変えるのは、最も避けたい失敗です。数値は「点」ではなく「線」で見る、これを徹底するだけで無駄なストレスから解放されます。

VO2maxが同じでも完走できる人とできない人の差

VO2maxが同じ48の2人でも、片方はサブ4を達成し、もう片方は4時間半でも苦しむ、ということが現実に起こります。差を生むのはVO2max以外の3要素、すなわちランニングエコノミー、スタミナ(持久係数)、そしてレース当日の補給とペース配分です。VO2maxはあくまでポテンシャルであり、それをタイムに変換する技術が伴わなければ宝の持ち腐れになります。だからこそ、VO2maxの数値が目標に届いたからといって安心せず、30km走で後半の失速耐性を確かめ、補給のタイミングを練習で試し、ペース配分をシミュレーションしておくことが欠かせません。予想タイムを現実にするのは、エンジンの大きさではなく、それを使い切る準備の量です。

⚠️ 注意したいポイント
VO2maxは「伸びれば速くなる魔法の数字」ではありません。フォーム・スタミナ・補給という変換力が伴わなければタイムは縮みません。数値の追求と実戦準備は、必ずセットで進めてください。

まとめ|VO2maxの予想タイムは「出発点」として賢く使う

VO2maxの予想タイムは、レース前から自分の実力を可視化できる便利な指標ですが、そのまま信じると裏切られます。仕組みを理解すれば、これは「現在の最大能力から導いた理論上のゴール」であり、当日の条件や後半の失速を織り込んでいない上限値だと分かります。最も精度が高いのはウォッチの推定値ではなく、直近の実際のレースタイムから出したVDOTです。そこに気温・高低差・自分のスタミナ傾向を加味して下方修正すれば、実走とのズレは大きく縮まります。そして数値を伸ばしたいなら、レベルに応じてジョグ・インターバル・閾値走を使い分けること。VO2maxが頭打ちになったら、フォームとスタミナという「燃費」で勝負するフェーズへ切り替えるのが、予想タイムを現実に変える近道です。

✅ この記事の要点チェックリスト
  • ☑ VO2maxは持久力の「排気量」、予想タイムは排気量×燃費で決まる
  • ☑ 予想タイムの計算はVDOT(ダニエルズ博士の走力指数)が橋渡し
  • ☑ VO2maxとVDOTは別物、ガーミンの数値はVDOTより高めに出やすい
  • ☑ サブ4の目安はVO2max48前後、サブ3.5は55前後
  • ☑ 精度を上げる鍵は「直近のレース実測+気温・高低差の補正」
  • ☑ 伸ばし方は初心者=ジョグ/中級者=インターバル/上級者=閾値走
  • ☑ 数値は点ではなく4〜8週間の線で見て、フォーム改善も並行する

まずは直近の5kmか10kmのタイムを換算表に当てはめて、今の自分のVDOTを確認することから始めてみてください。現在地が分かれば、目標までの距離と、やるべき練習がはっきり見えてきます。

※本記事の換算値は『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を基にした理論値です。トレーニングの実施にあたっては体調に留意し、最新情報は公式サイトでご確認ください。

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