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ウィンドブレーカーのタグや商品説明で「Pertex(パーテックス)」という表記を見かけて、気になったことはありませんか。ゴアテックスなら聞いたことがあっても、パーテックスとなると「防水なの?」「高いだけ?」「ランニングで使えるの?」と疑問が次々に出てくるものです。
先に結論をお伝えすると、パーテックスは1979年にイギリスで生まれた、アウトドアウェア向けの生地ブランドです。ウェアメーカーではなく、Rabやパタゴニア、ゴールドウインといった各社のジャケットに「中身の生地」として使われています。しかも1種類の素材ではなく、Quantum(クアンタム)、Quantum Air(クアンタムエア)、Equilibrium(イクイリブリウム)、Shield(シールド)など性格の違う素材群の総称です。ランナーにとって大事なのは「パーテックスかどうか」より「パーテックスの中のどれか」なのです。
この記事では、Pertex公式サイトの技術資料をもとに、素材ごとの違い、通気度「CC」や撥水「80/20」という数字の読み方、ゴアテックスとの使い分け、走るときに失敗しやすいポイント、撥水を長持ちさせる洗い方まで、市民ランナー目線で整理しました。
・パーテックスの正体と、1979年から続くブランドの成り立ち
・Quantum/Quantum Air/Equilibrium/Shieldの違いとランニングでの向き不向き
・通気度「CC」と撥水「80/20」の数字の読み方、ゴアテックスとの使い分け
・汗冷え・ずぶ濡れを防ぐ選び方と、公式が推奨する洗い方
パーテックスとは?ランナーが最初に知っておきたい3つの基本

まずは「パーテックスとは何者か」を3つのポイントで押さえます。ここを理解しておくと、ショップで商品タグを見たときの判断がぐっと速くなります。
パーテックスは「生地のブランド」で、ウェアを作る会社ではない
パーテックスは、ジャケットや寝袋に使われる高機能ナイロン系生地のブランド名です。ゴアテックスと同じく「素材側のブランド」で、パーテックス社が自分の名前でウェアを売っているわけではありません。
根拠として、Pertex公式サイトには「1979年からアウトドアで活動する人のための高機能生地を織ってきた」とあり、各素材ページには採用製品として他社ブランドのジャケットが並んでいます。たとえばQuantumのページにはパタゴニアのMicro Puff Insulated HoodyやRabのMicrolight Alpine Hoody、Quantum AirのページにはMountain HardwearのKor AirShell Hybrid JacketやRabのWindveil Jacketが挙げられています。
使い方の場面としては、ショップでウェアを比べるときに「ブランド名」と「生地名」を分けて見るのが基本です。同じRabのジャケットでも、表地がQuantumかQuantum AirかShieldかで、暖かさも通気性も防水性もまったく別物になります。
注意点は、「パーテックス使用」という表記だけでは性能がわからないことです。タグや商品説明にサブライン名(Quantum Airなど)まで書かれているかを必ず確認しましょう。サブライン名がない場合は、メーカーの商品ページで素材欄を見るのが確実です。
始まりは1978年、テントの中で気づいた「水の移動」
パーテックスの原点は、登山家ハミッシュ・ハミルトン氏(Hamish Hamilton)のひらめきです。Pertex公式の年表によると、1978年にテントの試験をしていた同氏は、織られたナイロンの上を水分が移動していく現象に気づき、「毛細管現象を使えば乾きを速められるのでは」と考えました。
翌1979年、同氏はイングランド・ランカシャーの織物工場「Perseverance Mill(パーセヴェランス・ミル)」にアイデアを持ち込み、Pertexの名前が登録されます。この工場は1901年創業で、1921年からはタイプライターのリボン生地、1964年からは極細ナイロン糸のリボンを手がけていました。極細の糸を高密度に織る技術が、そのままアウトドア生地に転用されたわけです。最初に採用されたのは、シェフィールドのBuffalo Systems社のパイル裏地付き寝袋でした。
ランナーにとってこの歴史が意味するのは、パーテックスの設計思想が最初から「汗や湿気をどう外に逃がすか」にあるという点です。走って汗をかく用途と、もともと相性のよい出自なのです。
ただし、誕生が古いからといって、どの素材も同じ思想というわけではありません。ダウンを包むQuantumのように「空気を通さないこと」を優先した素材もあるので、次の見出しで素材ごとに見ていきます。
2005年から三井物産の傘下に。英国生まれ・日本資本のブランド
意外と知られていませんが、パーテックスは2005年に三井物産(Mitsui & Co.)がブランドと知的財産を取得しています。これも公式年表に明記されている事実です。
年表では、三井物産の取得によってサプライヤーや織り手へのアクセスが広がったと説明されており、2007年には三井物産経由で得たメンブレン(膜)やコーティング技術を組み合わせた防水透湿素材「Shield」が登場しました。2010年には1平方メートルあたり25g/m²未満という超軽量のQuantum、2015年には通気性を制御したQuantum Airが発売されています。
使い方の視点で言えば、「英国の小さな工場の生地」というイメージで止まっていると、現在のラインナップの広さを見誤ります。いまのパーテックスは、ダウン用の表地からランニング向けウィンドシェル、防水シェルまでを揃えた総合的な生地ブランドです。
注意したいのは、国内のアウトドアメディアには今も「Perseverance Mills社が開発した素材」とだけ書かれた記事があることです。開発の起点としては正しいものの、現在の権利者とは異なるため、情報の新旧を見分ける目安にしてください。
1979年:ブランド誕生(Perseverance Millで名称登録)
1987年:Rab・Mountain Equipment・Snugpakと軽量ダウンプルーフ生地Microlightを開発
1990年:二重織のEquilibriumで特許取得(RabのVapour-riseで初採用)
2002年:DuPontの22dtex糸を使ったQuantumを発表
2005年:三井物産がブランドと知的財産を取得
2007年:防水透湿のShieldを発売
2015年:通気性を制御したQuantum Airを発売
(出典:Pertex公式 Timeline)
8つある素材ファミリー、走る人に関係するのはどれ?
Pertex公式サイトには、Quantum/Quantum Air/Quantum Pro/Shield/Shield Air/Shield Pro/Equilibrium/Aerosの8つの素材ファミリーが掲載されています。全部覚える必要はありません。ランニングで出会う頻度が高い4系統に絞って解説します。
Quantum:軽さ優先の「ダウンを包む器」
Quantumは、ランニング中に着る素材というより走る前後に羽織る中綿ジャケットの表地だと考えてください。公式の説明は「緻密に織られた、軽くて柔らかいダウンプルーフ生地」で、極細の糸で静止した空気を閉じ込め、撥水加工(DWR)で小雨や雪をはじきます。
根拠となる数値は通気度で、Quantumの公式ページでは1CC(cm³/cm²/sec、ASTM D737)と記載されています。ほとんど空気を通さないので、ダウンが抜けにくく、体温で温めた空気を逃がしません。用途も「保温維持が重要な静的な活動」「極寒下の動的な活動」「超軽量のダウンジャケットや寝袋」と明記されています。
ランナーの使いどころは、冬のマラソン大会のスタート待ち、レース後の移動、早朝の練習会で集合してから走り出すまでの時間です。小さく畳めるモデルが多く、ランニングリュックに入れておくと冷えから身を守れます。
デメリットは、通気度が低いぶん走り出すと熱と湿気がこもることです。Quantumの中綿ジャケットを着たままペース走をすると、走り出してしばらくすると内側が汗で湿ってきます。「走るときは脱ぐもの」と割り切って使いましょう。
Quantum Air:ランナーのためのウィンドシェル素材
ランニング用途でいちばん出番が多いのがQuantum Airです。公式は「激しい運動中の快適さを保つ素材」と位置づけ、単体でウィンドシェルとしても、中綿入りウェアの表地としても使えると説明しています。
Quantum Airの公式ページに記載された通気度は2CC未満〜70CC。オープンな織り構造で空気を通しつつ、風をある程度さえぎるバランス型です。引裂強度は1.0kg × 1.0kg、撥水はスプレー試験80/20と、Quantumと同水準の基本性能も確保しています。2015年の登場時から「アクティブインサレーション(動きながら着る保温着)」向けの素材として開発されました。
具体的な場面は、冬の朝ランやロング走の1枚目のアウター、秋口の河川敷で向かい風が強い日、トレイルランでの稜線歩きなどです。走り始めは肌寒く、20分後には汗ばむような日に、脱がずに走り続けられる素材と言えます。
注意点は、同じQuantum Airでも製品によって通気度の設定が違うことです。2CC未満なら防風寄り、数十CCなら通気寄りと性格が変わるため、メーカーの商品説明で「防風性重視」か「通気性重視」かを確認してください。また、防水素材ではないので本降りの雨には向きません。

「ランニング用のウィンドブレーカーって、普段着のナイロンジャケットと何が違うの?」——走り始めて最初の冬を迎えるランナーが、必ずと言っていいほどぶつかる疑問です…
Equilibrium:二重織で汗を外へ運ぶ
Equilibriumは、表と裏で織り密度が違う「二重織」の素材です。1990年に特許が取られ、RabのVapour-riseシリーズで初めて採用された、パーテックスの中でも歴史の長い素材です。
Equilibriumの公式ページによると、外側は密に織って風雨から守り、内側は粗く織って肌側の湿気を吸い上げます。この「デニール勾配」によって、水分を内側から外側へ素早く移動させるのが特徴です。通気度は2CC〜30CC、撥水はスプレー試験80/20です。ハミルトン氏が最初に着目した毛細管現象を、もっとも素直に形にした素材とも言えます。
使い方としては、肌に近いレイヤーで着るウィンドシャツや、汗を大量にかくペース走・インターバル走のアウターに向いています。公式の採用例にはMAAPのAlt_Road Wind JacketやゴールドウインのEquilibrium Gill Vent Jacketがあり、サイクリング用途でも使われています。
デメリットは、Quantum Airほど通気の幅が広くないため、真夏日に近い気温では暑く感じやすい点です。また二重織のぶん、同じ面積あたりではシングル織の極薄素材よりわずかに厚みが出ます。軽さを最優先するなら別の素材も比べてください。
Shield/Shield Air:雨の日に頼れる防水系
パーテックスで「防水」をうたっているのはShield系です。Shieldの公式ページでは、防水・透湿・防風・軽量を特徴とし、「重量と透湿性を優先する過酷な条件での激しい活動」向けと説明しています。
構造は、表地とメンブレン(膜)に、必要に応じて裏地を組み合わせたシステムで、2層・2.5層・3層の3種類があります。メンブレンには、分子拡散で水蒸気を通す無孔質タイプと、水滴より小さな孔をもつ微多孔質タイプの2種類があります。2023年前後に登場したShield Airは、電界紡糸で作ったナノファイバーのメンブレンを使い、防水でありながら空気も通すのが特徴です。公式によれば、湿った暖かい空気を対流で外へ押し出すため、一般的な透湿度試験では表れない快適性があるとしています。
ランナーの使いどころは、雨予報の日のロング走、山を走るトレイルランの携行用シェル、冷たい雨のレースです。
注意点は、Shieldの公式ページには耐水圧や透湿度の数値が載っていないことです。性能は製品ごとの層構成で変わるため、購入時はウェアメーカーが表示する数値を見て判断しましょう。
| 素材 | 公式の通気度 | 防水 | ランニングでの主な出番 |
|---|---|---|---|
| Quantum | 1CC | 撥水のみ | 走る前後の中綿ジャケット |
| Quantum Air | 2CC未満〜70CC | 撥水のみ | 冬〜春秋のウィンドシェル |
| Equilibrium | 2CC〜30CC | 撥水のみ | 汗の多い練習のウィンドシャツ |
| Shield/Shield Air | 公式記載なし(Shield Airは通気あり) | 防水 | 雨の日・山の携行シェル |
ランニングスタイル調べ(Pertex公式の各素材ページの記載値を整理。通気度の単位はcm³/cm²/sec、ASTM D737)
「1CC」「80/20」の数字は何を意味している?

Pertex公式サイトの素材ページには、見慣れない単位の数値が並んでいます。ここを読めるようになると、パーテックス以外のウェアを選ぶときにも役立ちます。
通気度「CC」は1秒間に生地を抜ける空気の量
結論から言うと、通気度のCCは数字が大きいほど空気を通し、小さいほど風を止める指標です。公式表記の単位はcm³/cm²/secで、1平方センチメートルの生地を1秒間に何立方センチメートルの空気が通り抜けるかを示しています。試験方法はアメリカの規格ASTM D737です。
Quantumの1CCは、ダウンを包むためにほぼ空気を通さない設計です。公式ページには「通気度はダウンの抜けにくさの代替指標として使われることが多い」との注記もあり、Quantumではダウンプルーフ性を別途EN 12132-1で試験していると書かれています。つまり、1CCという数字は「暖かさ」より「ダウンを閉じ込める性能」を語っているのです。
使い方としては、ウィンドシェルを選ぶとき「防風性」と「通気性」のどちらを優先したいかを、この数字で判断します。風が冷たい冬の河川敷なら小さい数字、汗を逃がしたい坂道練習なら大きい数字が合います。
注意点は、メーカーによって通気度の単位や試験方法が異なることです。CFMやL/m²/sなど別単位で書かれている場合もあるので、異なるブランド同士を数字だけで比べないようにしましょう。
Quantum Airの「2CC未満〜70CC」という幅の読み方
Quantum Airの通気度は1つの値ではなく、2CC未満〜70CCという幅で示されています。これは同じQuantum Airでも、製品ごとに防風寄りから通気寄りまで作り分けられることを意味します。
根拠は、Quantum Airが「制御された安定した通気性」を売りに2015年に登場したという公式年表の記述です。織りの密度を調整することで、通気度を狙った値に設定できるのがこの素材の強みです。同じ「Quantum Air採用」のジャケットでも、ある製品は風をほぼ止め、別の製品は走ると風が抜ける感覚になる、ということが起こります。
ランナーの選び方としては、冬の朝に信号待ちが多い市街地を走る人は防風寄り、ノンストップで公園を周回する人は通気寄りが快適です。インターバル走やビルドアップ走のように心拍が上がる練習が多いなら、通気寄りを選ぶと汗冷えしにくくなります。
デメリットは、ショップの商品説明に通気度の具体的な数値まで書かれていることが少ない点です。数値がない場合は「防風」「通気」のどちらの言葉が先に来ているか、ベンチレーションの有無などで設計の方向性を推測するしかありません。
撥水「80/20」は「20回洗っても80点」という意味
Quantum、Quantum Air、Equilibriumの公式ページには、スプレー試験80/20という表記があります。これは20回洗濯したあとも撥水80点の評価を維持するという意味で、試験は日本産業規格のJIS L 1092です。
撥水は生地の表面で水を玉にして転がす加工で、防水とは別物です。80/20は「新品時の撥水性能がどれだけ長持ちするか」を示す数字なので、ウィンドシェルを毎週洗うランナーには気になるポイントです。週1回洗うとしても、20回は約5か月分の洗濯にあたります。
使いどころとしては、小雨や霧雨のなかでの短時間ラン、朝露の多い芝生や林道でのトレイル練習です。撥水が効いていれば、表面に水が染み込んで生地が重くなるのを防げます。
注意点は、撥水は洗濯や摩擦で少しずつ落ちていくことです。公式も「工場出荷時のDWRは洗濯を重ねると弱まる」と明記しています。80点を維持するといっても永久ではないので、後半で紹介するお手入れで性能を保ちましょう。
実は、ランニング用のウィンドシェルは「風を通さないほど良い」わけではありません。完全に風を止める生地は、走って体温が上がると内側に湿気が溜まり、止まった瞬間に冷えます。パーテックスがあえて通気度に幅をもたせたQuantum Airを作ったのは、この「動いているときと止まったときの差」を埋めるため。数字の小ささ=高性能と考えず、自分の練習強度に合う通気度を選ぶのが、汗冷えしない近道です。
ゴアテックスと何が違う?雨と風で選び分ける考え方
パーテックスを調べる人の多くが気にするのが、ゴアテックスとの違いです。どちらが上という話ではなく、得意分野の違いとして整理します。
ゴアテックスは「膜」、パーテックスは「表地」から始まったブランド
いちばんの違いは出発点です。ゴアテックスは、W.L.ゴア社が開発した多孔質の防水透湿メンブレン(膜)で知られるブランドです。一方のパーテックスは、極細ナイロンを高密度に織る表地の技術から始まりました。
パーテックスが防水素材のShieldを出したのは2007年で、ブランド誕生から28年後のことです。公式年表には、Shieldは「パーテックスの表地技術に、三井物産経由で得たメンブレンとコーティングを組み合わせたもの」と記されています。つまり、パーテックスの本流は防水ではなく、軽さ・柔らかさ・撥水・通気のコントロールにあります。
ランナーにとっての使い分けは明快で、「雨を確実に防ぎたい」ならゴアテックスかパーテックスShieldのような防水シェル、「風と汗を両立させたい」ならパーテックスQuantum AirやEquilibriumのようなウィンドシェルです。
注意点は、「パーテックス=防水」「パーテックス=ゴアテックスの安い版」という誤解です。Quantum系やEquilibriumは撥水素材で、防水ではありません。雨具のつもりで買うと、本降りで中までしみてきます。
雨の日はShield、風と汗の日はQuantum Air
実際の練習日にあてはめると、雨が降るかどうかでシェル選びは分かれます。降水の可能性が高い日は防水のShield系、晴れか曇りで風が冷たい日はQuantum Air系、という2択で考えるとシンプルです。
理由は、防水メンブレンを挟んだシェルは、どうしても空気を通しにくくなるからです。Shield Airのように通気性をもたせた防水素材も登場していますが、Shieldの基本構造は表地+メンブレン+任意の裏地の重ね合わせです。対してQuantum Airは膜を持たず、織りそのもので通気度をコントロールするので、汗の抜け方がまったく違います。
具体的には、冬の晴れた朝のLSDならQuantum Airのウィンドシェル1枚、梅雨時や秋雨のロング走ならShield系のレインジャケット、天気が読めない山のトレイルランならQuantum Airを着てShieldをザックに携行、という組み合わせが現実的です。
デメリットとして、2枚持ちはそのぶん荷物が増えます。ただ、どちらも小さく畳めるモデルが多いので、ランニングリュックやウエストポーチに収まるサイズかを購入前に確認しておくと安心です。

予報は雨、でも走りたい。そんな日に一番迷うのが「何を着て走ればいいのか」ではないでしょうか。晴れの日と同じ格好で飛び出して、ずぶ濡れのTシャツが肌に張り付き、後…
タグの「Pertex®」表記で確認すべき3つのこと
パーテックス採用ウェアを選ぶときは、タグや商品説明でサブライン名・層構成・撥水加工の種類の3つを確認しましょう。
サブライン名は、これまで見てきたとおり性能そのものを決めます。層構成はShield系で重要で、2層・2.5層・3層のどれかによって、肌触りや耐久性、畳んだときの大きさが変わります。撥水加工については、公式ページに「Endurance」という撥水技術や、リサイクル素材の「Netplus」(廃棄漁網由来の再生ナイロン)、単一素材のポリエステルで作る「Revolve」といったオプションが掲載されており、製品によって採用が異なります。
使い方の例として、ネット通販で選ぶときは商品ページの「素材」欄までスクロールし、「Pertex Quantum Air」のようにフルネームで書かれているかをチェックします。「パーテックス素材使用」とだけある場合は、メーカーの公式ページで確認すると安心です。
注意点は、身頃と袖・脇などで素材を切り替えているハイブリッド製品が多いことです。「パーテックス採用」でも、生地全体ではなく前身頃だけというケースがあるので、どの部位に使われているかも見ておきましょう。
| パーテックスのウィンドシェル系の強み | 弱み・向かない場面 |
|---|---|
| 極細糸で軽く柔らかく、畳むと小さい 通気度を製品ごとに作り分けられる 撥水は20回洗濯後も80点を維持(公式値) | Quantum系・Equilibriumは防水ではない サブライン名がないと性能が読めない Shield系は耐水圧の公式数値が非公開 |
パーテックスのウェア選びで市民ランナーがやりがちな失敗

素材の性格を知らずに買うと、「せっかくのパーテックスなのに快適じゃない」という残念な結果になりがちです。よくある失敗パターンを原因と対策のセットで紹介します。
失敗例:Quantumのダウンジャケットで走り出して汗だくに
軽くて薄いQuantumのダウンジャケットを「これなら走れそう」と着たまま走り出し、しばらくして内側が汗で蒸れてしまう失敗です。止まった途端に湿ったダウンが冷え、かえって寒い思いをします。
原因は、Quantumが通気度1CCという空気をほぼ通さない設計であることです。公式が想定する用途も「保温維持が重要な静的な活動」が筆頭で、走るような動的な活動については「極寒下」という条件付きです。ダウンにとっては理想の表地でも、汗をかく運動には向いていません。
対策は、Quantumのダウンは走る前と走った後に限定することです。冬の大会ならスタートブロックに並ぶ直前まで着て、手荷物で預けるか、使い捨てのビニール袋などに切り替えます。練習なら、走り出す前にリュックへしまい、ゴール後の帰り道で再び羽織ります。
どうしても中綿入りで走りたいなら、表地がQuantum Airのアクティブインサレーションを選びましょう。公式も「中綿入りウェアの表地としても使える」と説明しており、熱がこもりにくい設計です。それでも気温が上がる日は暑くなるので、前を開けて調整してください。
失敗例:Quantum Airを雨具代わりにしてずぶ濡れに
「撥水だから多少の雨は大丈夫」とQuantum Airのウィンドシェル1枚でロング走に出て、本降りに遭ってずぶ濡れになる失敗も多く見られます。
原因は、Quantum Airの公式の特性表示が「Water resistant(撥水・耐水)」であり、Shieldのような「Waterproof(防水)」ではないことです。しかもQuantum Airは通気性を確保するためにオープンな織り構造を採用しています。空気が通る生地は、強い雨を長時間浴びれば水も通します。撥水は小雨や霧雨、短時間のにわか雨に対応するものと理解しておきましょう。
対策は、出発前に雨雲レーダーで降水を確認し、降る可能性があればShield系の防水シェルを選ぶか携行することです。ロング走のコースを、途中で屋根のある場所に逃げ込める周回コースにしておくのも有効です。
注意したいのは、濡れた状態で風に当たると体が急速に冷えることです。秋冬の雨は特に体力を奪うので、濡れたら無理に走り続けず、早めに切り上げる判断も大切です。
失敗例:ジャストサイズを選んで重ね着できない
見た目のシルエットを優先してジャストサイズのウィンドシェルを選び、冬に長袖シャツやミッドレイヤーを重ねたら窮屈で腕が振りにくい、という失敗です。
原因は、パーテックス採用ウェアの多くがレイヤリング(重ね着)を前提に設計されていることを見落としている点です。たとえば2026年秋冬にスノーピークが発売した「PertexQuantum Air Jacket」は、BE-PALの紹介記事で、中間着を着込めるゆとりのあるサイズ感だと紹介されています。メーカーによってカッティングの思想は異なり、ランニング専用品はタイト、アウトドア兼用品はゆったりめの傾向があります。
対策は、試着時に実際に冬に着る中間着を着て腕を前後に大きく振ってみることです。肩や脇が突っ張らないか、裾がずり上がらないかを確認しましょう。通販なら、サイズ表の胸囲に重ね着ぶんの余裕を加えて選びます。
逆に、大きすぎるサイズはバタつきの原因になり、風を受けて走りにくくなります。特に向かい風の河川敷では、生地のはためく音と抵抗が気になるので、ゆとりは「重ね着1枚ぶん」を目安にしてください。
・Quantum系とEquilibriumは「撥水」で、防水ではありません。本降りの雨にはShield系を選びましょう
・Quantumの中綿ジャケットは通気度1CC。走るときは脱ぐ前提で使います
・「パーテックス使用」だけでは性能は判断できません。サブライン名まで確認を
シーン別:どんなランナーにどのパーテックスが合う?
ここからは、市民ランナーのよくある練習スタイル別に、相性のよい素材を提案します。自分に近いシーンから読んでみてください。
冬の朝ラン・LSD派なら、通気寄りのQuantum Air
出勤前の朝ランや週末のLSD(ゆっくり長く走る練習)が中心のランナーには、通気寄りのQuantum Airのウィンドシェルがいちばん使いやすい選択です。
理由は、朝ランやLSDは走り始めが寒く、30分を過ぎると体が温まってくる「温度差の大きい練習」だからです。Quantum Airは通気度を製品ごとに設定できる素材で、軽さとオープンな織りによって、走りながら体温調整がしやすくなっています。防風寄りの製品だと後半に蒸れ、通気寄りの製品だと序盤に少し寒い、という特性を理解して選びましょう。
具体的には、気温が一桁台の朝なら長袖のベースレイヤーにQuantum Airのシェルを重ね、体が温まったら前のジッパーを下げて調整します。袖をまくれる、あるいはベンチレーションのあるモデルなら、さらに温度調整の幅が広がります。
注意点は、真冬の向かい風の日です。通気寄りの製品は風を通すぶん、強風下では寒く感じることがあります。冷え込みが厳しい日は、中間着を1枚足すか、防風寄りの製品と使い分けると快適です。

「冬のランニング、何を着ればいいのか毎回わからない」——これは走り始めて最初の冬を迎えるランナーが必ずぶつかる壁です。厚着すれば汗だくで走り終わりに凍え、薄着す…
トレイル・山ラン派なら、Quantum Air+Shieldの2枚体制
トレイルランや山でのランニングを楽しむ人には、着る用のQuantum Airと、携行用のShield系防水シェルの2枚体制をおすすめします。
理由は、山では標高差と時間帯で天候が大きく変わるからです。Shieldの公式説明「重量と透湿性を優先する過酷な条件での激しい活動」は、まさに山を走る場面を想定しています。さらにShield Airは防水でありながら空気を通すため、登りで汗をかく場面でも蒸れを抑えやすいとされています。
使い方としては、登山口から稜線まではQuantum Airのシェルか半袖、天候が崩れたらShieldに着替える、という流れです。公式のShieldページで採用例として挙がっているHaglöfsのL.I.M Airak 2.5L Jacketのように、軽量な2.5層の防水シェルはランニングザックにも収まりやすいサイズです。
デメリットは、2枚体制は荷物が増え、出費も2着分になることです。最初の1着をどちらにするか迷ったら、走る山域の天候が変わりやすいかどうかで決めましょう。夏山や長距離のトレイルレースでは防水シェルが必携装備に指定されることも多いので、大会要項も確認してください。
マラソン大会の待ち時間対策なら、Quantumの中綿を持参
冬のマラソン大会に出るランナーは、Quantumを表地に使った軽量な中綿ジャケットを、スタート前と完走後の防寒用に持っていくと重宝します。
理由は、大会当日はスタートブロックでの待機や手荷物預けの行列など、じっと立っている時間が長いからです。Quantumは公式に「保温維持が重要な静的な活動」向けと明記されており、通気度1CCで体温を逃がしません。2010年には25g/m²未満という超軽量版も登場しており。
具体的な使い方は、会場到着から整列直前まで着て、手荷物預けの締め切り前に預けるパターンです。完走後は汗が冷えて急激に寒くなるので、受け取ったらすぐ羽織ります。同じ素材で揃えた国内の例としては、スノーピークの「PertexQuantum Air Jacket」が35,200円程度(BE-PAL掲載時の価格)で2026年秋冬に発売されていますが、こちらはQuantum Airの防風シェルなので、レース前後に重ねる羽織りとして考えるとよいでしょう。
注意点は、ダウンは濡れると保温力が落ちることです。雨の大会では、中綿ジャケットの上からポンチョや防水シェルを重ねるなどの工夫が必要になります。
- ☑ 着て走るのか、走る前後に羽織るのかを決めた
- ☐ 雨の日にも使うなら、Shield系かどうかを確認した
- ☐ 商品説明でサブライン名(Quantum Airなど)を確認した
- ☐ 防風寄りか通気寄りか、自分の練習強度に合わせて選んだ
- ☐ 冬に着る中間着を重ねて、腕振りを試した
撥水を長持ちさせる洗い方・乾かし方
パーテックスのウェアは、洗い方ひとつで撥水の持ちが変わります。ここではPertex公式のお手入れページに沿って、ランナーが実践しやすい手順に整理しました。
洗う前の準備は「空すすぎ」と「裏返し」
結論として、洗濯機に入れる前の準備3つが撥水を守るカギです。公式が推奨しているのは、ドラム式洗濯機を使うこと、洗う前に空のすすぎを1回まわして洗濯機内の洗剤残りを流すこと、そしてポケットを空にしてジッパーやファスナーを閉め、ウェアを裏返すことです。
理由は、洗剤の残りが生地表面に付着すると、撥水加工の効きが落ちるからです。公式がわざわざ「空のすすぎで洗剤残りを取り除く」と書いているのは、普段の洗濯で洗濯槽に残った洗剤がウェアに移るのを防ぐためです。ジッパーを閉めるのは、金具が生地を傷つけるのを防ぐ目的もあります。
洗剤は、Quantum系のウィンドシェルにはGrangers Performance Wash、中綿入りにはダウン専用の洗剤が例として挙げられています。ShieldとEquilibriumも、アウトドアウェア用の専用洗剤が推奨です。
注意点は、ウェアの内側に付いている洗濯表示を最優先にすることです。公式も「洗う前にケアラベルを読み、その指示に従う」よう案内しています。メーカーによっては手洗いを指定している製品もあるので、まずタグを確認してください。
乾燥機の低温で撥水を「よみがえらせる」
Shield系とEquilibriumは、洗濯後に低温のタンブル乾燥にかけると撥水加工(DWR)が再活性化すると公式が明記しています。
洗濯コースは、低温のやさしいコースに追加のすすぎを加えるのが基本です。乾燥は可能なら低温のタンブル乾燥、ウィンドシェルなら吊り干しでも構いません。中綿入りのQuantumは、低〜中温でタンブル乾燥し、途中で取り出して振ったり叩いたりしてダウンをほぐし、完全に乾いたことを確認します。
使い方の目安として、雨のなかを走ったあとやシーズン終わりに、ウィンドシェル・防水シェルをまとめて洗って乾燥機にかけるのが効率的です。汗をかいたまま放置すると皮脂汚れが撥水を妨げるので、毎回洗えない場合でも、汚れが目立ってきたら早めに洗いましょう。
注意点は、乾燥機が使えるかどうかは製品のケアラベル次第ということです。公式も「ケアラベルが許可していれば」と条件をつけています。乾燥機が使えない場合は、陰干しでしっかり乾かしてください。
失敗例:普段の洗剤とすすぎ1回で撥水が戻らない
家族の洗濯物と一緒に普段の洗剤で洗い、すすぎ1回で済ませた結果、ウィンドシェルの表面で水が玉にならず、生地にしみ込むようになった、という失敗です。
原因は、公式が推奨する「専用洗剤」「追加すすぎ」「低温乾燥」の3点をすべて省いていることです。洗剤の成分が生地に残ると撥水が妨げられ、乾燥で熱を加えないと撥水加工が寝たままの状態になります。80/20という撥水の公式値も、適切なお手入れを前提にした数字だと考えておきましょう。
対策は、まず専用洗剤+追加すすぎで洗い直し、低温乾燥をかけることです。それでも水をはじかなくなったら、公式が案内するとおり、Grangers Performance Repel Plusなどの撥水剤で再処理します。撥水剤には、洗濯機に入れるタイプとスプレータイプがあります。
注意点として、撥水剤の再処理は「水が玉にならなくなったとき」に行うのが目安です。撥水が効いているうちに何度も重ねても効果は上がりにくく、手間とコストがかさむだけです。
- Step1: 手持ちのウィンドシェルのタグを見て、Pertexのサブライン名と洗濯表示を確認する
- Step2: 洗濯機の空すすぎ→裏返し・ジッパーを閉める→専用洗剤+追加すすぎで洗う
- Step3: ケアラベルが許せば低温タンブル乾燥。水をはじかなくなったら撥水剤で再処理する
まとめ
まずは手持ちのウィンドシェルやダウンのタグを見て、パーテックスのどのサブラインが使われているかを確かめてみてください。素材の性格がわかれば、次の冬に「どの日に何を着て走るか」が自然と決まり、汗冷えや雨で練習を台無しにすることが減っていきます。
※素材の仕様や製品の価格・販売状況は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。




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